お気に入りのおもちゃ

「これで最後だからね。」は、何度目?の話。

一週間ほど前、仕事中に妻からラインでメッセージが届いた。急用かと思い、メッセージを開いてみた。すると、長男が神妙な面持ちで話している動画だった。トラブルの予感。会社の席を離れ、廊下に出てから小さな音で再生してみた。

「パパ、剣が折れちゃったよ。ごめんね。」この後、妻に促されるように「また作ってくれる?」という短い動画だった。長男の悲しそうで、恥ずかしそうな表情が、なんとも愛おしい。

さて、なぜ控えめなのかというと、剣が折れるのは三度目だからだ。 まだまだ人気ですよね、鬼滅の刃。初めて「日輪刀が欲しい。」と言われたのは、いつだろう。

一本目は、割箸を束ねてビニールテープで繋げてから工作用紙で覆ったもの。すぐに折れた。さすがに申し訳なかった。

二本目は、長めの薄い板を工作用紙で覆ったもの。三か月ほどで折れた。

でも、すごく大切に使っていることを、私は知っていた。毎日こども園に持っていき、一日中遊んでボロボロになったところを、毎日帰ってきてから直していたのだ。うん、もう一本作ろう。だって、仮面ライダーセイバーのおもちゃに飽きるのは早かったのに、私が工作した刀では飽きることなく遊んでいる。

三本目は、壊れにくいものを作りこむという意味でも「つくるのは最後だからね」と伝えてから作成に取り掛かった。薄い板を切って重ねて強い芯材を作り、グルーガンで補強した。 これなら、簡単には壊れまい。

長男は「本物の刀みたいだ!」と大喜び。その一言で、すべてが報われた。 一年ほど飽きることなく毎日遊んでいた。毎日一緒に“戦いごっこ”をしていた。しかし終わりは突然訪れたようだ。

すべての思いが、本記事の冒頭で紹介した動画に詰まっている。急に長男を抱きしめたくなった。いそいで仕事を切り上げ、家路を急ぐ。

私「ただいま。剣、折れちゃったのか?」

長男「うん、ごめんね。」

私「また、一緒に作るか?」

長男「うん!」

これからは、「これが最後だからね。」なんて、軽々しく口にしないでおこうと思った。

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